誰暮 > 諸事考察/ICT/書籍映画ドラマ >

←後の諸事考察へ 前の諸事考察へ→

青森テレビの非常識な報道

自動車4台が絡む交通事故で4人死亡
9月22日午前1時頃、交通事故で4人が死亡した。最終的に加害者だと判断された西津軽土地改良区職員の高杉祐弥容疑者の自動車から見て、前方の自動車1台、対向車2台が絡む事故であった。事故の真相は、飲酒運転の上、強い雨で視界が悪い中、時速50kmの制限速度を大幅に上回る時速130kmで運転していた高杉容疑者の自動車が、前方の自動車に追突した後、自らは1台目の対向車と衝突し、追突された自動車が2台目の対向車と衝突したというものだ。それにより、前方の自動車と1台目の対向車に乗っていた乗員全員(2人ずつ)が死亡した。

事故について、複数のマスメディアが誤報した。青森テレビは、9月25日、「最初に衝突したとみられる2台の軽乗用車(注:高杉容疑者の前方の自動車と1台目の対向車)のどちらかの運転手が、酒気帯びだった可能性がある」と報じた。また、河北新報は、9月23日、「同署(注:つがる警察署)などによると、(中略)代行運転中の軽乗用車(注:高杉容疑者から見て1台目の対向車)と、(中略)軽乗用車(注:高杉容疑者の前方の自動車)が正面衝突。(中略)軽乗用営業車(注:2台目の対向車)と乗用車(注:高杉容疑者の自動車)の2台が巻き込まれたとみられる。」と報じた。

青森テレビの呆れた報道姿勢
ここからは推測になるが、つがる警察署は、マスメディアに対して間違った状況説明を行った可能性がある。その中で、「最初に衝突したとみられる2台の軽乗用車のどちらかの運転手が、酒気帯びだった可能性がある」という印象論も飛び出したのではないだろうか。これは、高杉容疑者が、自らの自動車に乗っていた人を除き、事故の関係者のほとんどが死亡していることを利用して、自分に有利な証言を続けたためだと思われる。

情報の制約がある中で、河北新報のような誤報が起こることはやむを得ないと言うことができるかもしれない。しかし、青森テレビの誤報は簡単に許されるべきものではない。「最初に衝突したとみられる2台の軽乗用車のどちらかの運転手が、酒気帯びだった可能性がある」とは、全く根拠のない印象論でしかない。誰が何を根拠にしてそのように判断したのか、青森テレビは全く説明することができないはずだ。高杉容疑者の前方の自動車と1台目の対向車のどちらかが蛇行運転していたことを確認していたのであれば、前述したような報道にはならないはずだからだ。報道機関には、証言をそのまま報道するのではなく事実確認を行うことや、事実確認のできない証言は軽々に報道しないことを肝に銘じてほしい。誤報したことよりも、その報道姿勢の方がはるかに深刻な問題だと考える。TBS系で放送されたドラマ「新参者」で、警視庁の主任(演:木村祐一)が「どっちかが怪しい」と言っているが、それと同類のパロディにしかなっていない。

今後の課題
この事故では、誤報のため、死亡した被害者がインターネット上でバッシングされるという二次被害もあった。しかし、上述した事実関係が公表されたのは、回復を待って10月22日に高杉容疑者が逮捕された時だ。警察署はそれ以前に何らかの対応を行うことはできなかったのかと思う。

また、青森テレビは、10月22日、ニューズ番組で誤報を訂正し、謝罪したが、背景事情の説明が全くなく、誤報の原因を検証した上で真摯に反省していると判断することができない状況だ。10月31日時点でウェブサイト上での謝罪もない。マスメディアの姿勢として呆れるばかりだ。

さらに、高杉容疑者は、飲酒運転は認めるものの、正常な運転が困難な状態であったということは否定しているという。20年以下などの懲役が課せられる危険運転致死傷罪ではなく、7年以下の懲役などが課せられる過失運転致死傷罪の適用になることを期待してのものらしい。危険運転致死傷罪の適用の要件となる「正常な運転が困難な状態」は立証が難しいというが、飲酒運転の撲滅のために要件の緩和や罰則の強化を検討するべきではないだろうか。

(2018年10月24日執筆、2018年10月31日更新、2024年8月5日掲載)

誰暮 > 諸事考察/ICT/書籍映画ドラマ >

←後の諸事考察へ 前の諸事考察へ→