ヤクルトの真中満監督がドラフト会議で交渉権獲得と誤解
10月22日のドラフト会議(新人選手選択会議)で、ヤクルトスワローズの真中満監督が明治大学の高山俊選手の交渉権を獲得していないのに獲得したと勘違いして波乱を呼んだ。阪神タイガースの金本知憲監督は、真中さんの喜ぶ姿を見て確認を怠った。事務局は、真中さんがインタヴューを受ける前に間違いに気付いたが、確認を優先し、インタヴューを止めなかった。
インターネット上では様々な意見が交わされた。まず、事務局の説明を聞き流し、十分に理解していなかった真中さんに対する批判だ。これは当然であろう。
金本さんに対する批判は多くなかった。しかし、来シーズン、相手球団の選手に本塁打を打たれ、打者走者がちゃんとホウムベイスを踏んだかどうかの確認を梅野隆太郎選手が怠ったとして、金本さんに梅野さんを指導する資格があるのかと考えてしまう。
そして、そのほかに批判されるべき対象は事務局だ。今回のような勘違いは少なくとも2005年に2回起こっているし、ほかにも瞬間的に勘違いした例はあるという情報もある。問題は、外れのくじにも紛らわしいマークが記されていることだ。その理由として、当たりくじにのみ交渉権獲得と記すと、二つ折りされたくじを開く前に透けて結果が分かってしまうからという説明がある。しかし、それならば、外側を黒色など明度の低い色にすればよいだけのことだ。また、この紛らわしいマークはドラフト会議のロゴであり、くじが本物であることを示すために必要だという説明もあるが、衆人が見ている中で不正をすることなどあり得ず、ロゴを記すとしてもくじの外側に記したり透かしにしたりすれば十分のはずだ。気にかかるのは、紛らわしいマークの中にスポンサーの宣伝があることだ。ドラフト会議はテレヴィジョン中継がなされ、くじはクロウズアップで放映されることになっており、その宣伝効果を狙ったスポンサーの思惑が紛らわしさに一役買っているとすると、何をか言わんやだ。さらに、このように外れくじは白紙ではないにも関わらず、年によっては外れくじは白紙だという事前説明がなされたこともあるという。
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人間のミスが重大な結果をもたらさないシステムの構築が必要
ここで、真中さんと事務局のどちらの責任が重大かということを議論しても仕方がない。問題は、どうすれば問題の再発を防止することができるかだ。ポイントは1点に絞られる。人間は時にミスを犯すものであり、それを前提にして、人間のミスが起こりにくいようなシステム、あるいは人間のミスが起こってもそれが重大な結果をもたらさないシステムをどのように構築するかということだ。これはプロセス管理の基本であり、関係者にはしっかりと検討してほしい。プロセス管理が徹底している西洋諸国では起こり得ないミスだという指摘もあった。
インターネット上でも再発防止策は議論されており、もちろん、前述したようなシステムの見直しを主張する意見は投稿されていたが、その度に、それを否定し、注意すればこのようなミスは起こらないとする精神論的な意見が投稿されており、日本の前途は大丈夫かと寒々とした気分にさせられた。
(2015年11月28日執筆、2016年5月7日更新、2024年8月5日掲載)
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