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大阪都構想の否決後の展望

大阪都構想の賛否を問う住民投票の結果
5月17日、大阪都構想の賛否を問う住民投票が行われ、賛成69万4,844票、反対約70万5,585票と大接戦であったが、否決された。出口調査により区別に見ると北部は賛成多数の区が多く、特に北区では賛成超が1万票を超えた一方、南部は反対多数の区が多く、特に平野区では反対超が1万票を超えた。また、性別に見ると男性が賛成多数、年齢別に見ると60歳代までの年齢層が賛成多数、居住年数別に見ると居住20年までの層が賛成多数であった。

橋下徹大阪市長は政界引退を、江田憲司維新の党代表は辞任を表明した。

可否を分けた要因
大阪都構想の可否を分けた要因は何であったのであろうか。

橋下さんは構想を推進する理由として府市の二重行政の弊害を説いたが、大阪市を廃止する理由としては、それだけでは不十分であったのであろう。大阪市廃止後は、大阪都によるカジノ誘致や高速道路整備のほか、特別区による身近な行政サーヴィスの推進を掲げていたが、もっと具体的に大阪の将来像を描かなければならなかったのではないだろうか。どのような産業集積を進めるのか、どのように雇用確保に努めるのか、特別区のサーヴィスはこれまでとどのように変わるのかなど、府市統合によって可能になることをもっと具体的に説明すれば、もっと市民の心に響いたのかもしれない。道州制との関係も説明不足であったように感じた。

橋下さんが、かつて慰安婦問題で旧日本軍を擁護したことも女性票が離れる要因となったと思う。国政において安全保障体制の改革を進める安倍晋三総理大臣と気脈を通じる右派寄りと評価されることは、地方自治を進める上では有利には働かない。

自由民主党や民主党などの反対派からは、大阪市の財源が大阪都に流出してしまう問題が指摘された。大阪都が東京都と異なるのは、特別区が多数を占めることにはならないという点だ。大阪都が、少なくとも中長期的に現在の大阪市民のためになる政策を実施するという保証が欲しいところであった。

今後の方向性
大阪に改革が必要なのは論を待たない。若い人を中心とした現状への危機感が賛成票に繋がったと考えるべきだ。

今後、大阪市の権限強化(可能であれば特別市への昇格など)と周辺市町村との連携強化・合併、区の再編と権限強化などが考えられてよいところであろう。道州制の議論を進めていくことも必要ではないだろうか。

橋下さんには残り少ない任期でその筋道を付けることが求められていると思う。

(2015年5月19日執筆、2015年5月24日更新、2024年8月5日掲載)

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