誰暮 > 諸事考察/ICT/書籍映画ドラマ >

←後の諸事考察へ 前の諸事考察へ→

政界再編と愛川さんの苦悩

CSディジタル放送のSKY PerfecTV!などで視聴することのできる朝日ニュースターで放送中の討論番組「愛川欽也 パックイン・ジャーナル」が静かな人気を集めているらしい。政治問題には素人であるはずの愛川欽也さんが決してパネリストの言いなりにならず、鋭い問題提起を繰り返し行うスタイルが人気の理由であろう。

7月13日放送の番組では民主党の代表選挙が取り上げられ、議論は政界再編に及んだ。愛川さんは、政界の浄化のためには政権交代が必要だと説く。そして、野党が自由民主党に対抗するためには、小異を捨てて大同につく必要があるという。その通りだと思う。以前から、民主党は様々な考えを持った人が集まった烏合の衆であり、解体が必要だという主張を聞くことが多かったが、小選挙区制の下で政策を実現していくためには、政策目標の実現に向けて、類似の政策を掲げている政党が合従連衡するということが理に適っていると考える。共産党のように我が道を行く政党が政界において一定の影響力を持っているということは、全く不自然なのだ。共産党のような政党が淘汰されないことは、我が国の民主主義が未成熟であることを意味していると言ってよいであろう。少数意見に耳を傾ける必要がないと言っているのではない。少数政党は、実現可能性のない政策に固執するのではなく、政策の実現可能性を追求するべく様々な方策を探らない限り、存在価値がないと言っているのだ。

では、小選挙区制を前提として、今後、政界再編があるとすると、それはどのような形になるか、考えてみよう。古い日記を紐解くと、自由・国権尊重と、平等・人権尊重という対立軸を設定し、それぞれの党派が対立軸上のどこに位置するか、中間派を含めて考えた記述が残っている。以下のようなものだ。それぞれ、中間派と連携した勢力が政権を担い得ると考えていた。

1994年
政治的立場 党派
新保守(自由主義、国権尊重) 新生党、自由民主党渡辺派、同三塚派、公明党
中間派 日本新党
社民リベラル(平等主義、平和尊重) 自由民主党小淵派、同宮沢派、民社党、新党さきがけ、社会党、共産党
 
1996年
政治的立場 党派
新保守 自由民主党強硬派(中曽根康弘元総理大臣、梶山静六官房長官など)、新進党主流派(小沢一郎党首など)
中間派 自由民主党中間派(橋本竜太郎総理大臣、竹下登元総理大臣など)
民主リベラル 自由民主党穏健派(河野洋平前総裁、加藤紘一幹事長など)、新進党興志会(細川護熙、羽田孜両元総理大臣など)、社会民主党、新党さきがけなど
 
1999年
政治的立場 党派
自由主義・国権主義 自由民主党江藤・亀井派、同森派、同山崎派、自由党
中間派 自由民主党小淵派、同旧河本派、同河野グループ
平等主義・民主主義 民主党、自由民主党加藤派

これらの考え方には、自由民主党の派閥は政治的立場を表していると言うことができるかどうかという問題点があるが、さらに、自由民主党ははたして分裂するかという根本的な問題点もある。この点について、日刊ゲンダイ・ニュース編集部長の二木啓孝さんの見解は明快だ。曰く、「自由民主党は鵺(ぬえ)のような存在であり、政権与党になるために集まっているようなものだ。自ら分裂して野に下るようなことは決してない。自由民主党を分裂させるためには、予算編成権を2回奪わなければならない。」と。これもその通りだと思う。政権交代は一筋縄では行かない。

それでも政権交代の可能性を探ると、民主党と自由党の連携が挙げられる。対立軸は上の3例とは異なり、構造改革か権益擁護かとなる。政権交代の可能性は、自由民主党の権益擁護型の経済政策が行き詰まりを見せた時に高くなるであろう。

第1次政界再編
政治的立場 党派
構造改革、小政府主義、サプライ・サイド政策 民主党、自由党、石原慎太郎東京都知事、田中康夫前長野県知事
権益擁護、大政府主義、有効需要政策 自由民主党

さて、上の対立軸は番組で議論されたわけではないが、護憲派の愛川さんは、今後行われるであろう政界再編に護憲派が主役として登場しないことを察知している。そして、民主党に信を置くことができず、苦悩を感じている。

これについては、仕方のないことだと言いたい。国民の平和憲法に対する関心が薄れてきているからだ。個人的には平和憲法は大切にしたいと思うが、国民の多くが正々堂々と軍隊を持ちたいと真に望むのであれば、改憲もやむを得ないと考える。いずれにしても、改憲か護憲かというような1955年体制下の対立軸が復活することはないであろう。

政権交代が実現したとする。二木理論によると、政権交代から2年を経て、自由民主党の各党派は政権を目指して与党の各党派に働きかけを行うことになるという。必要な構造改革が終わっていれば、与党の各党派は働きかけに応じるかもしれない。その結果、与野党ともに分裂し、それまでと異なる対立軸に基づいて政界再編が起こる可能性がある。

第2次政界再編
政治的立場 党派
自由競争、小政府主義、サプライ・サイド政策 鳩山由紀夫民主党代表、小沢一郎自由党党首、小泉純一郎総理大臣、石原慎太郎東京都知事、田中康夫前長野県知事
敗者復活、大政府主義、有効需要政策 菅直人民主党幹事長、横路孝弘前民主党副代表、橋本竜太郎元総理大臣、亀井静香前自由民主党政務調査会長、土井たか子社会民主党党首

上はその一例だが、この辺りになるとよく分からない。愛川さんにとってはそれなりに分かりやすい対立軸かもしれない。

(2002年7月27日掲載)

誰暮 > 諸事考察/ICT/書籍映画ドラマ >

←後の諸事考察へ 前の諸事考察へ→