白鵬関の45回目の優勝が批判の対象に
名古屋場所は、横綱と大関の9年振りの全勝対決の末、それまで6場所連続休場していた白鵬関が7場所振り45回目の優勝を飾った。好成績が続いていた照ノ富士白鵬関は第73代横綱昇進が決まった。
名古屋場所の結果次第では引退勧告の可能性もあった白鵬さんと、一時は「大関から序二段まで陥落した照ノ富士さんの復活劇は、ともに大いなる称賛に値すると思う。
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白鵬さんの立ち合いなどに対する批判が続出
しかしながら、白鵬さんの立ち合いなどに対する批判が続出した。
まず、14日目の正代関戦だ。白鵬さんは仕切板よりもはるか後方で仕切った。小兵力士が取る戦法だと酷評された。
また、千秋楽では、肘打ちのようなかち上げを見舞ったことが横綱の品格に欠け、勝敗が決まった後、鬼の形相で拳を握りしめたことが礼儀に反するという批判を受けた。
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暗黙のルールは許されるか
ここで、白鵬さん批判が的を射ているかについては、そのような議論が国際的に成立し得るかどうかが基準になると考える。
まず、仕切板のはるか後方で仕切ることについてだ。30歳代後半に差し掛かった白鵬さんの技量が正代さんよりもはるかに勝っているのならば別だが、そうでないとすると、正代さんの厳しい突き押しを避けるための作戦として順当なものであり、批判には根拠がないと考える。
次に、かち上げだ。これも、横綱だから行ってはならないと言う批判は、正鵠を得たものだと言うことはできない。相撲の技として認められるべきものなのかどうかが問われるべきだ。
これらについては、相撲協会が力士に行ってもらいたくないのであれば、禁止すればよいのだ。暗黙のルールで片付けてしまおうというのは、悪い意味で日本的であり、外国人力士が大勢土俵に上がる今日、通用しなくなっている。相撲協会には、ぜひ必要なルールは明文化してもらいたい。
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西洋にも武士道精神はあった
勝敗が決した時、鬼の形相で拳を握りしめることが礼儀に反するというのは、敗者に配慮する武士道精神に基づくものだ。日本発祥のほかの格闘技でも見られる。これも外国人には理解が難しいであろうと考えていたら、この武士道精神は西洋にもあった。メイジャー・リーグ・ベイスボールでは三振を取った投手が拳を握ることはマナー違反とされているらしい。それでも、感極まった時に自然と湧き上がる衝動を抑えることは難しい。喜びを行動に表してしまった力士を叱責して貶めるのではなく、別の方策が考えられてもよいようにも思う。
(2021年7月30日執筆、2024年8月5日掲載)
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